ドラブロ ーバス運転士の徒然日記ー

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滋賀県で「交通税」の導入が検討されています

先日、滋賀県において新たに「交通税」の導入が検討されているという記事を見つけました。

merkmal-biz.jp

滋賀県は、全国初の「交通税」導入に向けて本格的な議論を始めた。地域を走るバス・鉄道の維持費用を税金で賄おうというもの。しかし県内でも賛否が分かれている。

滋賀県は、全国初の「交通税」導入に向けて本格的な議論を始めた。

交通税とは、地域を走るバス・鉄道の維持費用を税金で賄おうというもの。2022年4月20日出された県の税制審議会の答申では導入の検討を求めることが記されており、これから本格的な検討が始まる。一体どういった経緯で検討されているのだろうか。

滋賀県の交通税は三日月大造知事が再選した2018年6月、記者会見で初めて示された。三日月知事は選挙公約に掲げていた「地域公共交通の充実」ために 「厳しい経営状況にある公共交通を守るために何をするか。一つの選択肢として負担を県民が分担する」 として、議論を進めるとした(『京都新聞』2018年6月26日付)。

滋賀県で危機を迎えている公共交通は、鉄道とバスだ。

鉄道で交通税による維持の対象となっているのは、滋賀県東部を走る近江鉄道だ。同社は鉄道・バス事業を運営しているが、鉄道単独では1994(平成6)年以来赤字が続いており、2017年12月には維持が困難であるとして、沿線自治体に協議を求めるに至った。

これに対して、沿線5市5町は法定協議会を設置して検討。バス転換は行わず、自治体の支援により全線を存続することを決めた。

その後、

・利用者数目標の設定
ふるさと納税を通じた寄付

など、存続に向けた努力が続いている。

そして、2024年から公有民営の上下分離方式(施設の整備・保有主体と運営主体を分離すること)による運営が決まった。鉄道の運営会社は近江鉄道とし、線路や車両などは2022年12月に設立予定の近江鉄道線管理機構が担う。これにより、自治体の負担は2022年度以降、

・県:3億3000万円
・沿線自治体:計3億4000万円

となる(『京都新聞』2022年3月30日付朝刊)。

記事引用元:Merkmal

滋賀県内の公共交通機関はどの事業者もピンチ!

滋賀県内の公共交通機関事業者は、どの会社もいい経営状況とは言えません。
滋賀県民の方々は、やはり自家用車で外出される方が多いため、公共交通機関である電車やバスに乗る機会が少ないのです。
また、新たに転入してこられる方々も、JR琵琶湖線沿線の駅に近いところに家やマンションを購入し、滋賀県内というよりは京都や大阪に通勤される方が多いためですね。

湖東地域で営業を行う近江鉄道

湖東地域で営業を行う近江鉄道(画像:近江鉄道株式会社)

特に、記事の中で紹介されていた近江鉄道にいたっては、鉄道単独で平成6年以来赤字続きという状況だったため、2024年以降は線路や車両などのメンテナンスを沿線自治体が行い、鉄道の運行を近江鉄道が行う上下分離方式で運営することが決まりました。

また、近江鉄道グループの路線バス(近江鉄道バス湖国バス)も、大津市草津市といった人口密集地以外では収益も厳しく、路線の減便や廃止が相次いでいるようです。

近江鉄道グループの路線バス

近江鉄道グループの路線バス(画像:近江鉄道株式会社)

少子高齢化を迎えて、交通弱者の足を確保するために、自治体の負担はさらに増えると見込まれています。
こうした中で、交通税の構想が登場したのも自然な流れですよね。

具体的には県民税や固定資産税に上乗せする方式で検討されているようですが、その導入には県内でも賛否が分かれているとのこと。
現職の三日月知事は2022年7月の滋賀県知事選に立候補を表明しており、導入はこの結果によって決定付けられると思って間違いなさそうです。

交通税の導入検討はこれが初めてではなかった!?

公共交通機関の維持を目的に税金を徴収する構想は、実はこれまでにも何度も検討されてきました。
1997年9月には、当時の三塚 博大蔵相が道路・鉄道・交通など交通機関の利用者全体に負担を求める「総合交通税」の創設を検討していることを明らかにしていたそうです。

この目的は、旧国鉄の長期債務27兆8000億円の返済がメインだったようで、具体的な検討が行われたものの、利用者に負担を求めることに事業者も反発し、頓挫したとのこと。

その後、海外では鉄道・バス路線維持のために税金が徴収されていることが紹介されましたが、本格的な議論は実施されませんでした。
今回のように、既存の税金に上乗せする方式を採っても実質的な増税には変わりはなく、有権者の反発を買うことが確実だったからですね。

後回しにしてきた議論が、次々と問題となって表面化してきましたね。
コロナ禍によって、10年先に想定していた未来が一気に来てしまった公共交通機関のあり方ですが、今後も様々な議論を呼び起こしそうですね。