財政難の京都市が市役所のエレベーター扉を漆塗りにリニューアルされ批判が集まっています
京都市役所にあるエレベーターの扉が漆塗りに装飾され、「とても綺麗」という声がある一方で「無駄遣い」という批判が高まっています。
今、SNSなどで批判が噴出しているのが、この高級感漂うエレベーター。一体なぜ、批判の声が上がっているのでしょうか。
艶やかな黒地にあしらわれた、きらめく紅葉…。漆塗りの伝統技法「蒔絵」で装飾されたエレベーターのドアです。都内で、この写真を見てもらうと…街の声:
めっちゃ綺麗、日本を感じますね
街の声:
アート的っていうんですか。おしゃれだなって思います
皆さん、大絶賛。
しかしこのエレベーターがあるのは、2022年度末に8610億円もの借金を抱える見込みの、京都市の市役所なのです。
深刻な財政難が続く京都市は、管理するサッカー場の人工芝も張り替えられず、見かねたサッカーファンを名乗る市民1人から15億4000万円の寄付を受けたこともあるといいます。
そんな窮状の中で、来庁者が利用する市役所のエレベーターを“漆塗りドア”に改修したというのです。かかった費用は、2基で約500万円。
2022年3月半ばから運転を開始したものの、市民などから批判の声が上がる事態となりました。漆塗りのエレベーターを絶賛していた街の人も、財政難の実情を知ると…
街の声:
場所が悪いんじゃないですか。用事が無い限り、市役所って行くことないよね。であれば、観光スポットとかでやった方が来客とかPRにはつながるんじゃないかと思いますけど
街の声:
うわー。これを聞くとちょっと(費用)かけすぎなのかなとか思ったりしました
京都市は、こうした声をどう受け止めているのでしょうか。めざまし8が、財政難の中で改修に踏み切った意図を聞いてみると…
京都市担当者:
そのような声もいただいていますが、京都の伝統をもっと伝えてほしいという声もあります。(漆塗りは) 金属の上に漆をぬるという、京都市にある企業の技術を採用いたしました。今後も、京都らしさを伝えていきたいと思っています
記事引用元:めざまし8「#NewsTag」5月13日放送分
2021年には行財政改革案を発表
京都市は、2021年5月に企業の破産にあたる「財政再生団体」に2028年度にも転落する恐れがあるとして、2021~25年度の5年間で計約1,600億円の収支改善に取り組む行財政改革案を公表しました。
将来の借金(市債)返済のために積み立てた基金で赤字を穴埋めする会計手法が限界に陥り、財政運営の抜本的見直しを迫られることになったためです。
改革案の内訳は、全職員対象の給与カット(最大6%)や職員数削減(550人)で215億円、事業や補助金の見直しなどで721億円、土地売却で117億円などとなっています。
自治体は通常、財源が不足すると貯金にあたる「財政調整基金」を取り崩しますが、京都市では2000年度にほぼ枯渇しました。
次に取り崩し始めたのが、将来の借金返済のための貯金である「減債基金」というお金でした。
京都市では2005年度から減債基金を取り崩し、21年度は新型コロナウイルスによる観光客の激減などで200億円超の財源不足に陥り、基金から過去最大の181億円を取り崩しました。
この状態が続くと2026年度に残債基金が枯渇してしまうため、京都市は大幅な行財政改革に踏み切ることにしたのです。
財政危機の要因はバブル期の公共事業や市民サービス、人件費など
京都市の借金がここまで増大した要因の一つは、1997年に開業した市営地下鉄東西線です。
工事費が高騰したバブル期に建設を続けた結果、事業費が当初想定の1.4倍(5,461億円)に増加する一方で、利用客は当初見込んだ1日あたり約18万4,000人に一度も達したことはないとのことです。
地下鉄事業は、営業収入を支出にあてる特別会計で営むのが原則ですが、京都市では営業収入だけでは収支が成り立たず、2004~17年度に計967億円を一般会計から補填したそうです。
公共事業の支出が財政を圧迫する中、手厚い市民サービスは維持したままでした。
70歳以上の市民が無料か低料金で市バス・地下鉄を使える「敬老乗車証(敬老パス)」は、1973年度の約3億円から2019年度は対象者の増加で50億円まで増加し、市民1人当たりの公費負担(3,392円)は同様の制度がある13政令市中、2番目に高い水準となっています。
他にも、小学生の虫歯治療費の全額助成事業を1961年から、保育士の独自加配を1966年から継続しています。
市役所職員の給与水準も政令市で4位タイという高水準で推移しています。
このような危機的状況の中でリニューアル工事が行われた市役所のエレベーター。
京都市民にとっては市民サービスが改悪される懸念が日増しに高まる中、あまり理解の得られる施策ではなかったように思います。