新潟県において官民連携の高速バス改革が始まっています
2022年4月1日(金)から、新潟県内を走る高速路線バス9路線を「ときライナー」というブランドに統一して運行がスタートしました。
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新潟県内のバス事業者6社は4月1日から、県内の高速バス9路線を統一ブランドで運行する。1つのウェブサイトでバスの位置や遅れなどの情報を確認できるようにしたり、全社で車内フリーWiFiを整えたりする。利便性や認知度を高め利用拡大につなげる。
長岡線、上越線、柏崎線、糸魚川線、十日町線、東三条線、五泉村松線、巻潟東IC駐車場線、燕線の9路線を「ときライナー」のブランドで運行する。全便とも予約不要で全席が自由席。料金は後払いで、現金やICカード(りゅーと、Suica、PASMOなど)が使える。
県内高速バスネットワークで新潟を1つにつなぐというコンセプトから、新潟のシンボルの「朱鷺」をモチーフにした統一ロゴを作った。新潟県庁で29日、ロゴなどをラッピングしたバスを披露した。花角 英世知事は式典で「トキ色でかわいらしいバスだ。県民の皆様に歓迎される存在になってほしい」と述べた。
6社は頸城自動車、新潟交通、越後交通、新潟交通観光バス、蒲原鉄道、アイ・ケーアライアンス。新潟県と6社などは2021年2月に官民連携の協議会を設置し、百貨店と連携した貨客混載などの取り組みを進めてきた。
(記事引用元:日本経済新聞)
新潟県内のバス会社6社が県内高速路線バス9路線を「ときライナー」ブランドに統一
「ときライナー」は、新潟県で運行を開始した新たな高速バスネットワークです。
県内のバス会社6社による9つの県内高速バス路線を「ときライナー」というブランドに統一しました。
参加したのは、頸城自動車、新潟交通、越後交通、新潟交通観光バス、蒲原鉄道、アイ・ケーアライアンスの6社で、新潟県内の主要バス会社3グループ(新潟交通、越後交通、頸城自動車)が全て参加しています。
これらの会社が運営する、長岡線、上越線、柏崎線、糸魚川線、十日町線、東三条線、五泉村松線、巻潟東IC駐車場線、燕線の9路線が、2022年4月1日から「ときライナー」のブランドで運行を開始しました。
「ときライナー」のウェブサイトで、9路線の時刻や運賃などの情報をまとめて情報提供しています。
また、各社のバスのサービスも統一し、予約不要、運賃は車内でICカード支払いができ、全車フリーWi-Fiを備えるようになりました。
全ての路線でバスロケーションシステムを導入し、バス位置情報をリアルタイムで確認できます。
また、パークアンドライドも充実させ、ウェブサイトで駐車場の位置なども案内しています。
利用者としては、新潟県内の高速バスの情報を得るのが容易になり、どの路線に乗っても同等のサービスが期待できる、という環境を整備したわけですね。
官民一体で高速バスのあり方を検討
「ときライナー」が始まった背景には、人口の減少やマイカー利用の増大などによる利用者の減少により収支が悪化し、運転手不足も相まって県内の高速バス路線の減便・廃止が相次いだことがありました。
2017年には、新潟駅と村上駅を結ぶ路線や、新潟駅と津川駅を結ぶ高速バス路線が廃止となり、それぞれ村上市と阿賀町が代替交通として乗合タクシーやマイクロバスを運行しています。
また、北陸新幹線の開業に伴い、柏崎駅・高田駅・糸魚川駅などの上越エリアと新潟駅を結ぶ特急列車の運行本数が減ったことが、高速バスの重要性が見直されたきっかけになったようです。
バス事業者や市町村等が協力・連携して取り組みを進めてきましたが、利用者の増加や収支の改善といった効果が十分に出ず、今後も各バス事業者の判断により不採算路線の減便・廃止が進むことが懸念されています。
このような状況のため、県内高速バス路線については官民一体となって取り組む必要があるということで、2018年度に「都市間高速交通ネットワークのあり方検討会」を設置して議論を行い、2020年3月に報告書を取りまとめました。
報告書では「高速バス網は、以前は収益性が高く、公的関与が及ばない事業であったが、近年では、特に郊外路線で収益が悪化し、路線の減便・廃止が見られる中において、これからは、行政も関与し、地域の価値を高め、QOL(quality of life:生活の質)を確保するためのツールとして考えるべきである。」としていて、さらに「現在の高速バスは、一部路線で複数事業者による共同運行が行われているものの、基本的な事業計画は、路線毎又は事業者毎に検討・企画されているが、今後は、高速バスネットワーク全体として、一体的に事業を検討・企画する体制が必要である。」とまとめています。
要は、今までそれぞれのバス事業者がバラバラで運行していたものを、共同運行の拡大などを行って、大きな枠としてまとめて効率化を図りましょうということですね。
こういったことを広域自治体である県が関与して行った事例というのは全国でも珍しく、今後のモデルになっていきそうですね。
今後の高速バスネットワーク充実に向けた取り組み
2022年4月現在「ときライナー」は県内高速バス会社が共通ブランドで運行し、サービス水準を統一しているというだけです。
しかし、報告書では今後の高速バスネットワークの充実に向けた取り組みも提言しています。
具体的には、
- 高速バスを降りてそこから目的地に行くことができるよう、カーシェアリングやレンタサイクル、(デマンド)タクシーといった二次交通の整備
- MaaSの導入により、多様な交通モードによる最適な移動方法の検索・予約・配車・決済を可能にする
- 乗降するバス停までの移動手段(二次交通)の整備に加えて、パーク&ライド駐車場や待合環境の充実
- 運転手不足により高速バス路線そのものの充実が難しいのであれば、県外向け高速路線バスの県内バス停での停車
- 市内周回はフィーダー路線(路線バス、コミュニティバス、乗合タクシー)等に任せることで、短縮された時間分を新たな運行に充てる
- 道路運送法第35条の管理の受委託制度を活用し、サービスエリアでの事業者間での運転手交代など、運行を効率化することで運転手の余剰を生み出し、路線の増便等を図る
といった内容です。
地方では公共交通機関が不便ということで、マイカーが手放せない方がたくさんいらっしゃいます。
また、そういった中でJRでもローカル線の維持が困難になっている状況なので、地方においては高速バスの重要性がますます高くなってくるんじゃないかと思います。
新潟県のこの取り組みがモデルとなって、他の都道府県にも広がってくれると、高速バス事業者の未来も少しは希望が出てくるかなと期待してしまいますね。