広島電鉄が電車運転士の保護メガネ導入の着用試験を行っています
広島電鉄の電車事業本部では、運転士が運転中に感じるまぶしさや目の疲労を低減し、より安全な運転環境を整備するために保護メガネの導入を検討しています。
今回、保護メガネの着用感や利用者が受ける印象について検証するため、着用試験を実施しています。
広島県内で路面電車などを運行する広島電鉄(広島市中区)が、2022年6月1日から17日にかけて、広電宮島口~広島駅間である実験を行っている。
「運転士の保護メガネ着用実験」だ。
広島電鉄のツイッターアカウント(@HIRODENofficial)は5月30日、実際に運転士が保護メガネを着用している姿をツイート。保護メガネとはいうものの、見た目はサングラスのようだ。
それをかけて運転をする姿は、なかなかにハードボイルド。
しかし、なぜわざわざ「実験」という形を取ったのだろう。
Jタウンネット記者は広島電鉄の電車事業本部を取材した。
そもそも広島電鉄が保護メガネの導入を検討する目的は、運転士が運転中に感じるまぶしさや目の疲労の低減だ。電車事業本部の担当者はこう説明する。
「これまで運転士には、まぶしさによる目の疲労や視認性低下の可能性がありました。過去には紫外線による視力低下に伴い、サングラスの着用を希望する運転士もいました」
そこで広島電鉄が実験に導入したのはタレックス社の「トゥルービュー」。直射日光や反射光のまぶしさの軽減で視認性の向上や疲労軽減の効果があるという。
広島電鉄が公式サイトに掲載している保護メガネ着用前と後の見え方の変化の違いを見ると、その差がわかる。着用しているほうが道の先まではっきりと見通せる。
今回の実験に参加するのは、西広島営業所の担当運転士3人。彼らからは「視界が良好になった」「西日が眩しくない」と好意的な意見が上がっているという。
実はJR西日本でも、運転操縦時における視認性向上及び疲労軽減による更なる安全性の向上を図るため19年9月から在来線運転士への保護メガネ貸与を試行。その結果が良好であったため、20年3月に同社内全エリアの在来線運転士、21年3月には新幹線運転士への貸与(いずれも希望者対象)を開始した。
他社での導入実績、そして運転士からの声を踏まえれば、すぐにでも本格導入となってもおかしくない。しかし、路面電車を走らせる広島電鉄としては無視できない要素がある。
「利用客が受ける印象」だ。
「利用者が受ける印象の検証」――これが、広島電鉄が保護メガネの導入の「実験」を行う大きな目的のひとつだ。
「路面電車の大きな特徴でもありますが、運転業務に加え、接客業務が伴います。保護メガネを着用した運転士に話しかけづらい、怖いというマイナスなイメージを抱いてしまわれないかと懸念しておりました。
乗務に接客が伴うので、お客様の心証や接遇面を考慮して、慎重に検討を進めております」(電車事業本部の担当者) サングラスのような見た目であることが、悪印象に繋がることを危惧したのだ。ただ、保護メガネの着用実験を告知した5月30日の広島電鉄のツイートには好意的な声が寄せられている。
「運転士がグラサン掛けたらかっこいい」
「安全運転の為には使うべきだと思います」
「安全運転が運転手の第一条件なんで、それがどんな格好になろうが目的を果たせるんなら文句があっても無視して欲しい」
また、電車事業本部の担当者によると、実際の利用客からも好意的な声が寄せられ、「見た目より安全な運行を希望する」「運転士の健康が第一」との意見が多いそうだ。
「本格導入を念頭に着用試験とお客様アンケートを行っております。出てきた課題に対処していきながら引き続き導入に向けて検討を進めます」と担当者。本格的な導入は22年度中を予定しているという。
記事引用元:Jタウンネット
JR西日本から始まった電車運転士へのサングラス貸与
2019年9月に、JR西日本が鉄道運転士の前方確認時の視認性の向上、及び疲労軽減による更なる安全性の向上を図るため、在来線運転士の一部において保護メガネ(サングラス)貸与の試行を実施していました。
その後、試行結果が良好だったため、JR西日本全エリアの在来線運転士へ拡大し、2020年3月下旬より運転資格のある内勤者含む約4,000名を対象に貸与を本格的に実施することとなりました。
当初は在来線の運転士のみでしたが、その後JR西日本全エリア内の新幹線運転士(運転資格のある内勤者含む)約500名にも対象を広げて、2021年4月以降貸与が始まっています。
電車運転士へのサングラス貸与はJR西日本が初めての取り組みとなりましたが、その後は京都丹後鉄道(2021年7月)、井原鉄道(2021年10月)、福井鉄道(2021年12月)広島高速交通(アストラムライン・2022年4月)と、全国各地の鉄道会社へ広がっています。
直射日光による信号や標識の見落としや、それに起因する事故を無くすための取り組みということですね。
個人的には、安全性を重視した取り組みでとても良いことだと思います。
広島電鉄が行う「着用試験」とは?
今回、広島電鉄では2022年6月1日(水)~17日(金)までの2週間ちょっとの期間で着用試験を行っています。
対象となるのは西広島営業所に所属されている運転士3名。
着用試験という名目なのは、運転士の視界の変化による安全性向上が図れるかどうかということに加えて、利用者からの印象を調査しているからですね。
記事にもある通り、路面電車の運転士は電停に到着した際に運賃の収受などの接客業務が発生します。
その際に、利用者に威圧感や不快感を与えないかという点を調査したいようですね。
実験期間は明日までで、アンケート調査の回答期限は今月末までとなっています。
結果によっては電車運転士に貸与が決まると思いますが、広島電鉄では「本検証結果は、バス運転士への導入の検討にも活用させていただきます」とも言っていますので、場合によっては広電バスの運転士さんもサングラスを装着して乗務する日が来るのかもしれません。
僕も、たまに直射日光や反射した光で対向車や先行車が見にくかったりするので、実際にサングラスが貸与されるとなると、ちょっと羨ましいな~と思います。