ドラブロ ーバス運転士の徒然日記ー

バス運転士が日常の気になったコトやモノについて書き綴っています

路線バス事業者に対する事業停止処分が発表されました

もう2週間ほど前の出来事になりますが、国土交通省四国運輸局が一般乗合旅客自動車運送事業者(路線バス会社)に対して122日間の事業停止処分を行いました。
行政処分を受けたのは、香川県高松市女木島めぎしまにある鬼ヶ島観光自動車株式会社。
運輸局から事業者に対しての行政処分としては「事業許可取消し」に次ぐ2番目に重い処分となります。
また、路線バス事業を営む会社に対しては、極めて異例な処分内容となりました。

なぜこのような処分が下されるに至ったのでしょうか?
処分の決め手となったのは、2021年11月17日に鬼ヶ島観光自動車に対して行われた四国運輸局による特別監査でした。
そこで見つかったのは、20項目にも及ぶ違反項目。
四国運輸局は2020年9月30日にもこの会社に対して車両使用停止130日間の行政処分を行っていましたが、その際の指摘事項に関して改善が見られないということで、今回の処分に至ったのだそうです。

具体的に、どのような違反項目があったのかは下記の通りです。

  1. 営業所の公示事項が不適切であったこと
  2. 運転者の勤務時間及び乗務時間に従った乗務割等を定めていなかったこと
  3. 運転者に対する点呼が確実になされていなかったこと
  4. 運転者に対する点呼の記録簿に不実記載を行っていたこと
  5. 運転者の乗務について定められた事項の記録が不適切であったこと
  6. 運転基準図を作成していなかったこと
  7. 運転者に対して運転基準図に基づく指導をしていなかったこと
  8. 運転者台帳について定められた事項の記録が不適切であったこと
  9. 事業用自動車の運行の安全を確保するために必要な運転者に対する指導監督が不適切であったこと
  10. 高齢運転者に対して事業用自動車の運行の安全を確保するために遵守すべき事項についての特別な指導が不適切であったこと
  11. 事業用自動車の日常点検を実施していなかったこと
  12. 事業用自動車の定期点検整備等を実施していなかったこと
  13. 整備管理者の変更の届け出をしていなかったこと
  14. 運行管理規程を定めていなかったこと
  15. 運行管理者に対して法令で定められた特別講習を受講させていなかったこと
  16. 運行管理者に対して法令で定められた一般講習を受講させていなかったこと
  17. 営業所に備えおくべき書類が適切に管理されていなかったこと
  18. 輸送の安全にかかわる情報を公表していなかったこと
  19. 法令に基づく社会保険等(社会保険、厚生年金保険、労働災害保険、雇用保険)への適正な加入がなされていなかったこと
  20. 事業報告書及び輸送実績報告書の提出をしていなかったこと

小難しい言葉が並んでいますが、かいつまんで言うと運転手に対して義務付けられている点呼を実施せず、毎日行わなければならないバスの車両点検も行わず、運行管理者に対して受講が義務付けられている特別講習や一般講習を受けさせていなかった上に、運転手に対して労災保険雇用保険といった社会保険に加入させていなかったというもの。

それだと、こんな重い処分を受けても仕方ないよ・・・と言いたくなりますね。
下記の新聞記事には、サビだらけのおんぼろバスが有名でそれ目当てにやってくる観光客もいるということでした。

www.asahi.com

記事の中にも書いてある通り「改装する予算が無く、毎年、車検に出して整備するだけで精一杯だった」ということは、会社自体の経営もかなり苦しかったのではないかと思います。
しかし、そういう理由でお客様の生命・財産を危険にさらしていいわけはなく、今後の改善が望まれます。

この会社の路線バスが走っていた女木島は4月14日に開幕する瀬戸内国際芸術祭の会場になっているようですが、別の事業者が同じ路線で代行バスを走らせているといいます。
観光でやってこられるお客様の不利益になるような事態は避けられたようで、そこだけは良かったのかなと思います。