ドラブロ ーバス運転士の徒然日記ー

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鉄道は環境に優しくない!? JR西日本がローカル線の収支を発表しました

JR西日本が4月11日に、同社が運営する在来線のうち1日の輸送密度が2,000人未満の線区について経営状況を公表しました。

www.westjr.co.jp

以前より、ローカル線の存続可否について言及している中で、長谷川 一明はせがわ かずあき社長が会見で「大規模輸送という鉄道のメリットを生かせるかの一つの基準」として提示していた目安が1日の輸送密度が2,000人を超えるかどうかでした。

資料の中で、JR西日本は「鉄道は自動車に比べてきめ細かな移動ニーズにお応えできないこともあり、線区によっては地域のお役に立てておらず、厳しいご利用状況となっています。特に今回お示ししている線区については、大量輸送という観点で鉄道の特性が十分に発揮できていないと考えております。これらの線区はCO2排出の面でも、現状のご利用実態では必ずしも鉄道の優位性を発揮できていない状況にあります」と言っています。

ローカル線におけるCO2排出量

ローカル線のCO2排出量と他の交通機関の比較

ローカル線のCO2排出量と他の交通機関の比較(画像:西日本旅客鉄道株式会社)

地方のローカル線では、電化が進んでいないためディーゼルエンジンを使った気動車が1両~2両編成で走っています。
そのため、都市部の電車と比べてもCO2排出量は多くなりがちです。
しかし、走行時のエネルギー効率はバスや乗用車に比べて高いため、乗車人数が多ければ多いほど、他の交通機関に比べると環境負荷は低く抑えられ、結果的に「鉄道は環境に優しい乗り物」となるわけです。
しかし、今の利用状況ではとてもそこまではいかず、むしろ環境に優しくない乗り物となっていて環境負荷も大きいと言っているわけですね。

JR西日本在来線 路線別の利用状況と営業収支

2019年度 在来線線区別利用状況

2019年度 在来線線区別利用状況(画像:西日本旅客鉄道株式会社)

今回JR西日本が公表したのは、2019年度の輸送密度が2,000人未満だった17路線30区間と、その営業係数や営業損益などで、2017~2019年度と2018~2020年度の平均を示したものです。
営業係数とは100円の収入を得るのにかかった費用のことで、100を下回って小さければ小さいほど黒字というものです。

2019年度 輸送密度(平均通過人員)2,000人/日未満の線区の経営状況(2017-2019平均)
2019年度 輸送密度(平均通過人員)2,000人/日未満の線区の経営状況(2018-2020平均)
2019年度 輸送密度(平均通過人員)2,000人/日未満の線区の経営状況
左が2017-2019平均、右が2018-2020平均の数字(画像:西日本旅客鉄道株式会社)

この表で見ると、一番収支が悪いのは山陰本線(京都駅~幡生はたぶ駅)の出雲市駅~益田駅間で、2017~2019年度平均では34億5000万円、2018~2020年度平均では35億5000万円の赤字となっています。
2019年の1日の平均通過人員は1,177人、2020年の平均通過人員は725人と山陰本線の中ではそこそこの人数が乗っているようですが、除雪作業や塩害などによる保線費用が嵩んでいるのか、営業費用が高くなっていて赤字が膨らんだようです。

逆に、一番収支が良かった(マシだった)のは2017~2019年度平均では芸備線げいびせん備中神代びっちゅうこうじろ駅~広島駅)の備中神代駅~東城とうじょう駅と、小野田線居能駅小野田駅)で、こちらはそれぞれ2億円の赤字となっています。
また、2018~2020年度平均では芸備線備中神代駅~広島駅)の備中神代駅~東城駅が1億8000万円の赤字となっています。

しかし、営業係数を見ると、芸備線東城駅備後落合びんごおちあい駅の2017~2019年度平均で「25,416」、2018~2020年度平均で「26,906」というぶっちぎり最下位の数字をたたき出しています。
1日の平均通過人員も2019年は11人、2020年は9人となっていて、100円を稼ぐのに25,000円以上の費用がかかっているのも納得できる状況です。

2019年度 輸送密度(平均通過人員)2,000人/日未満の線区の経営状況(ご利用状況の推移)

2019年度 輸送密度(平均通過人員)2,000人/日未満の線区の経営状況
1987年~2020年までの利用状況の推移(画像:西日本旅客鉄道株式会社)

利用状況についても、コロナ禍においてガタンと落ち込んでいる状況が見て取れますね。
特に、大糸線南小谷みなみおたり駅~糸魚川駅姫新線中国勝山駅新見駅など、2019年から2020年の1年間で1日の平均通過人員が半分以下になった路線もあります。

JR西日本は「地域の皆様と課題を共有させていただき、『地域公共交通計画』の策定などの機会に積極的に参画し、地域のまちづくりや線区の特性・移動ニーズをふまえて、鉄道の上下分離等を含めた地域旅客運送サービスの確保に関する議論や検討を幅広く行いたいと考えています」と言っています。
コロナ禍による未曽有の経営危機から一刻も早く脱したいJR西日本と、ローカル線の存続を求める地方自治体の間でこれからどういう協議が行われるか、これからも注目していく必要がありそうですね。